民法752条は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定める。婚姻の実質が夫婦が協同して生活を営むことであるとすると、本条は当然の要請であるといえる。
(1) 同居義務
夫婦は、同一の場所に居住して共同生活をしなければならない。単に住居を同じくすること(いわゆる家庭内別居)は、この意味の同居とは言えない。
居住する場所は、夫婦の協議で定める。そして、夫婦の一方が同居を拒むときは、他方は同居請求をすることができる。ただし、それを強制する手段はない(直接強制も間接強制もできない)と解されている(大決昭5.9.30)。
単身赴任や病気療養などの正当な理由があれば、一時的に別居をしても同居義務に違反するとはいえない。
正当な理由なく同居を拒むときは、悪意の遺棄として離婚原因になり(770条1項2号)、また、相手方配偶者は扶養義務を拒絶することができる。
(2) 協力義務・扶助義務
協力義務は婚姻生活を維持するために事実的な協力(子育てなど)をする義務であり、扶助義務は夫婦間の扶養義務である。夫婦間の扶養義務は、互いの生活水準を同等に保持すべき義務(生活保持義務)であって、一方に余裕があるかぎりで貧窮する他方を援助する義務(生活扶助義務)ではない。