このページの最終更新日 2016年5月28日
日本の離婚法においては、夫婦間の合意があれば、その理由を問わずに離婚することができる(763条)。これを協議上の離婚あるいは協議離婚と呼ぶ。協議離婚は、届出によって成立する(764条→739条1項)。
(1) 離婚の届出の方式
離婚の届出の方式は、婚姻の届出の場合に準じる(764条→739条2項)。もっとも、離婚の届出においては、未成年の子がいるときは夫婦の一方を親権者と定めて(819条1項)、その旨を届書に記載しなければならない(戸籍法76条1号)。
このような方式に従わない離婚の届出は受理されないが、誤って受理されてしまえば、離婚は有効に成立する(765条)。
(2) 不受理申出制度
当事者は、あらかじめ本籍地の市町村長に対して、自らを本人とする離婚の届出を受理しないように申し出ることができる(戸籍法27条の2第3項)。これを不受理申出制度と呼ぶ。
不受理申出には、一度は同意して届書を作成したが後に翻意したことによるものと、最初からそのつもりのないが予防的にするものとがある。
不受理申出制度は、当初は離婚について認められていたが、後に創設的届出全般に認められるようになった。
離婚の合意は両当事者の自由な意思によってなされる必要があり、離婚意思の合致がない協議離婚は無効である。離婚意思の有無について、以下のような問題がある。
(1) 方便のための離婚
たとえば、債権者の強制執行を免れるための財産分与をする目的で離婚をするように、当事者に事実上の夫婦関係を解消させる意思がないのに、他の目的のために離婚の届出をした場合、その離婚は有効であろうか。
この点に関して、離婚意思についても、婚姻意思と同様に実質的意思説と形式的意思説の対立がある。判例は、婚姻意思の場合(実質的意思説)とは異なり、離婚については形式的意思説に立って、方便のための離婚を有効とする(最判昭38.11.28―戸主を改めるための離婚、最判昭57.3.26―生活保護を受けるための離婚)。
(2) 離婚意思の存在時期
離婚意思は、届書作成時だけでなく、届出受理時にも存在しなければならない。届書作成時に離婚意思があったのを後に翻意し、離婚意思を有しないことが明確であるときには、離婚は無効である(最判昭34.8.7)。
また、離婚届書を作成した当事者が届出受理までに死亡した場合、届書が提出されても離婚は無効であるが、郵送による届書提出であれば、死亡時に届出があったものとみなされる(戸籍法47条)。
(3) 協議離婚の能力
協議離婚をするには意思能力があれば足りる。成年被後見人であっても、意思能力を回復している状態であれば、単独で有効な離婚をすることができる(764条→738条)。
(1) 離婚の無効
離婚意思のない離婚の届出は、当然に無効である。したがって、離婚無効の判決や審判がなくても、利害関係者は他の訴訟の前提問題として離婚の無効を主張することができる(最判昭53.3.9)。
離婚意思をめぐる問題については、先述したとおりである。
夫婦の一方が知らない間になされた離婚の届出は無効であるが、追認によって有効にすることができる(最判昭42.12.8)。
(2) 離婚の取消し
離婚意思が詐欺・強迫によるものであったときは、詐欺・強迫を受けた当事者は、協議離婚の取消しを家庭裁判所に請求することができる(764条→747条1項)。婚姻の取消しと同様に、離婚の取消しは訴えによらなければならず、また、取消しができる状態になった時から3ヶ月の期間制限があり、追認によって取消権が消滅する(764条→747条2項)。婚姻の取消しの場合とは異なり、離婚の取消しの効果は遡及する(764条は748条を準用しない)。
民法上、離婚の手続きとして協議上の離婚と裁判上の離婚の二つしか規定されていない。しかし、これら以外にも、家事事件手続法によって調停による離婚と審判による離婚とが認められている。
(1) 調停離婚
当事者間で離婚の協議が不調・不能のときであっても、直ちに離婚訴訟を提起することはできない。調停前置主義の建前をとる以上、当事者はまず家庭裁判所に調停を申し立てることになる。この手続きによる離婚を調停離婚と呼ぶ。
調停離婚は、協議離婚と同様、当事者間の合意を基礎として成立する。ただし、当事者間に離婚の合意が成立してそれが調書に記載されると、その記載は確定判決と同一の効力を有する(家事事件手続法268条)。
(2) 審判離婚
調停が成立しない場合であっても、家庭裁判所は、離婚するのが相当と認めるときに、調停に代わる審判によって離婚を命ずることがある(家事事件手続法284条)。この手続きによる離婚を審判離婚と呼ぶ。これは、当事者が離婚の大筋に合意しているものの、本質的でないことを理由に調停が成立しない場合において、裁判所が職権により離婚の成立を後押しするものである。
審判離婚は、裁判離婚と異なり、民法770条1項の離婚原因を必要としない。
当事者が審判後2週間内に適法な異議の申立てをしたときは、調停に代わる審判はその効力を失う(同法286条)。異議の申立てがないときは、調停に代わる審判は確定判決と同一の効力を有するようになる(同胞287条)。
(3) 調停・審判後の離婚の届出
調停離婚、審判離婚のいずれの場合にも、離婚の届出をしなければならないが、この届出は報告的届出である。
(1) 裁判離婚
協議や調停によって夫婦間に離婚の合意が成立しないときは、夫婦の一方は、離婚の訴えを提起することができる(770条1項)。この手続きによる離婚を裁判上の離婚あるいは裁判離婚と呼ぶ。
離婚訴訟を利用するためには、その前提として家庭裁判所に離婚調停を申し立てていなければならない(調停前置主義)。当事者が家事調停の申立てをせずに離婚の訴えを提起したときは、裁判所が職権で家事調停に付すことになる。もっとも、裁判所が事件を調停に付すことが相当でないと認めるとき(相手方が生死不明、強度の精神病であるなど)は、そのまま離婚訴訟の手続きに入る(家事事件手続法257条)。
離婚請求が認容されるためには、民法770条1項に列挙された離婚原因が認められなければならない。離婚原因については、ページを改めて説明する。
(2) 和解離婚と認諾離婚
離婚判決にいたらなくても、離婚訴訟中に離婚が成立する場合がある。当事者に離婚の和解が成立することによる和解離婚と被告が原告の主張をすべて受け入れる認諾離婚がそれである。