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被補助人

このページの最終更新日 2017年7月4日

補助開始の審判

家庭裁判所による補助開始の審判を受けた者を、被補助人と呼ぶ(16条)。

(1) 審判の要件

補助開始の審判は、精神上の障害により事理弁識能力(判断能力)が不十分である者について、一定の者が家庭裁判所に請求することによって行われる(15条1項本文)。

事理弁識能力が「不十分である」とは、重要な取引を行うに際して誰かの援助があったほうが好ましいような精神状態であることをいう。その程度が深刻な場合には、保佐開始の審判の対象となる。

民法7条または11条に規定する原因がある者(事理弁識能力を欠く常況にあるか、または著しく不十分である者)については、後見開始の審判または保佐開始の審判によらなければならず、補助開始の審判をすることができない(15条1項ただし書)。

補助開始の審判は、補助人の同意を要する旨の審判(同意権付与の審判、17条1項)および補助人に代理権を付与する旨の審判(代理権付与の審判、876条の9第1項)の一方または双方とともにしなければならない(15条3項)。補助人の権限は、補助開始の審判ではなく、これらの審判によって付与される(後述)。

なお、これらの補助人に権限を付与する審判は、補助開始の審判があった後も随時請求することができる。

(2) 審判の申立人と本人の同意

補助開始の審判の申立人は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人・成年後見人)、後見監督人(未成年後見監督人・成年後見監督人)、保佐人、保佐監督人または検察官である(15条1項本文)。

補助人の同意を要する旨の審判および補助人に代理権を付与する旨の審判は、これらの者に加えて、補助人と補助監督人が申立人となる(17条1項、876条の9第1項)

後見開始の審判や保佐開始の審判とは異なり、本人以外の者の請求により補助開始の審判をする場合には、本人の同意が必要である(15条2項)。これは、自己決定の尊重を理由とする。

補助人に権限を付与する審判をする場合にも、自己決定の尊重の観点から、本人の申立てまたは同意が必要とされる(17条2項、876条の9第2項)。

(3) 審判相互の関係

補助開始の審判をする場合において、本人が成年被後見人または被保佐人であるときは、家庭裁判所は、その本人にかかる後見開始の審判または保佐開始の審判を取り消さなければならない(19条2項)。

(4) 補助の登記

補助開始の審判がなされると、法務局の後見登記等ファイルに記録する方法で登記される(後見登記等に関する法律4条)。

被補助人の行為能力

特定の法律行為について補助人に同意権が付与された場合、被補助人がその行為をするには補助人の同意を得なければならない(17条1項本文)。すなわち、その行為についての被補助人の行為能力は制限される。

被補助人に対する行為能力の制限の範囲は、民法13条1項所定の行為の一部に限られる(17条1項ただし書)。被補助人の判断能力は被保佐人よりも高いことが想定されているので、被保佐人に対する行為能力の制限の範囲を超えるべきではないからである。

被補助人が補助人の同意を要する行為をその同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)を得ずに行った場合には、その行為を取り消すことができる(同条4項)。

取り消すことができる者(取消権者)は、被補助人本人(その承継人)および補助人である(120条1項)。

なお、補助人に代理権のみが付与されて同意権が付与されない場合には、被補助人の行為能力は制限を受けない。つまり、被補助人は、完全に単独で行為をすることができる。

被補助人の保護者

1 補助人

被補助人には、その保護者として補助人が付けられる(16条)。

補助人の選任は、家庭裁判所が職権で行う。成年後見人や保佐人と同様に複数人選任することができ、法人も補助人になることができる(876条の7第1項・第2項)。

また、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、一定の者(被補助人、親族、補助人)の請求により、または職権で、補助監督人を選任することができる(876条の8第1項)。

2 補助人の権限と義務

補助人の権限と義務は、次のとおりである。

(1) 補助人の権限

補助人は、次のような権限を有する。ただし、これらの権限のすべてが当然に与えられるわけではない。

① 被補助人が行為能力を制限された法律行為を行うときに同意を与える権限(同意権)(17条1項)

② 被補助人が補助人の同意を得ずにした法律行為を取り消す権限(取消権)および追認する権限(追認権)(同条4項・120条1項・122条)

③ 特定の法律行為について被補助人を代理する権限(代理権)(876条の9第1項)

補助人の権限は、補助開始の審判によって当然に付与されるのではなく、権限を付与する審判の種類・内容によって定まる。

① 同意権付与の審判(17条1項)

この審判によって補助人は、特定の行為についての同意権や取消権、追認権を有する。

前述したように、同意権付与の対象となる行為は、民法13条1項に列挙された行為のなかの一部に限られる(17条1項ただし書)。

② 代理権付与の審判(876条の9第1項)

家庭裁判所は、一定の者(15条1項本文に規定する者、補助人、補助監督人)の請求によって、特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

特定の行為について補助人に代理権が付与されても、被補助人の行為能力が制限されるわけではない。

なお、補助人に付与できる代理権の範囲には、同意権の場合のような制限はない。

(2) 同意に代わる許可

補助人に同意権が与えられている行為について、被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず補助人が同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる(17条3項)。

同意に代わる許可を得た行為については、被補助人は単独で有効にそれを行うことができる(同条4項参照)。

(3) 保佐人の義務

補助人は、補助の事務を行うにあたり、被補助人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態および生活の状況に配慮すべき義務(身上配慮義務)を負う(876条の10→876条の5第1項)。

補助開始の審判の取消し

民法15条1項本文に定める原因(精神上の障害により事理弁識能力が不十分であること)がなくなった場合、家庭裁判所は一定の者(本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人、検察官)の請求にもとづいて補助開始の審判を取り消さなければならない(18条1項)。

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