このページの最終更新日:2019年4月12日
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新民法158条から161条までは、時効の完成を阻止する措置を講じることが困難な障害が存在する場合に時効の完成を猶予することを定めています。
① 未成年者または成年被後見人に法定代理人がいない場合(158条1項)
② 未成年者または成年被後見人が法定代理人に対して権利を有する場合(158条2項)
③ 夫婦間の権利(159条)
④ 相続財産に関する権利(160条)
⑤ 天災等の場合(161条)
これらの事由は、旧法において「時効の停止」として規定されていたものです。
新法においても、161条の期間を除いて、制度の実質的内容に変更はありません。
① 未成年者または成年被後見人に法定代理人がいない場合(158条1項)
時効期間満了前6か月以内の間に未成年者または成年被後見人に法定代理人がいない場合、未成年者・成年被後見人が行為能力者となった時または法定代理人が就任した時から6か月を経過するまでの間は、未成年者・成年被後見人に対して時効は完成しません。
未成年者および成年被後見人は、時効の完成を阻止する措置をとることが単独ではできないからです。
本規定の対象となるのは未成年者や成年被後見人に不利益となる時効(取得時効・消滅時効ふくむ)にかぎられ、これらの者に利益となる時効は含まれません。
② 未成年者または成年被後見人が法定代理人に対して権利を有する場合(158条2項)
未成年者または成年被後見人がその財産を管理する法定代理人に対して権利を有する場合、未成年者・成年被後見人が行為能力者となった時または後任の法定代理人が就任した時から6か月を経過するまでの間は、その権利について時効(消滅時効)は完成しません。
法定代理人が自己にとって不利益となる措置をとることを期待することができないためです。
法定代理人の管理財産に対する取得時効についても類推適用されます。
③ 夫婦間の権利(159条)
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
夫婦間では、時効の完成を阻止する行為をすることが期待できないからです。
本条の「婚姻の解消」には、配偶者の死亡や離婚のほか、婚姻の取消しも含まれます。
④ 相続財産に関する権利(160条)
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時または破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
相続財産を管理する者がいなければ、相続財産に属する権利について時効完成阻止の措置をとることができず、また、相続財産に対して権利を有する者も行為の相手方がいないからです。
したがって、本条の時効には、相続財産に属する権利についての時効(相続財産に不利益となる時効)だけでなく、他人が相続財産に対して有する権利についての時効(相続財産に利益となる時効)も含まれる。
⑤ 天災等の場合(161条)
「時効の期間の満了の時に当たり」、天災その他「避けることのできない事変」のために147条1項(裁判上の請求等)や148条1項(強制執行等)にかかげる手続きを行うことができない場合、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は、時効は完成しません。
「避けることのできない事変」とは、豪雪、洪水、戦乱などによる交通閉塞や裁判事務の休止を指し、当事者の錯誤や疾病、不在などは含まれません。
「時効の期間の満了の時に当たり」の要件は緩やかに解されており、厳格に時効期間の満了時でなくても時効の完成を延期すべき場合であれば、本条を適用してよいと考えられています。
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