このページの最終更新日 2019年10月4日
住所(じゅうしょ)とは、各人の生活の本拠をいう(22条)。
「生活の本拠」は、その人の生活関係の中心となる場所であって、本籍地や住民登録地とは必ずしも一致しない。
法人の住所は、その主たる事務所または本店の所在地である(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律4条、会社法4条など)。
法律上、住所は、一定の要件と結びついている。たとえば、不在の標準となる場所(25条1項・30条1項)や弁済の場所(484条)、相続開始の場所(883条)は住所である。また、住所は、裁判管轄を決定する標準ともなる(民事訴訟法4条など)。
居所(きょしょ)とは、多少の期間は居住するものの、住所と呼べるほどには生活との関係が密接でない場所をいう。
住所が知れない場合(住所が存在しない、または不明の場合)は居所を住所とみなし、また、日本に住所を有しない場合は、日本人であるか外国人であるかを問わず、日本における居所を住所とみなす(23条)。
当事者は、取引の便宜上、住所以外の場所を定めて仮の住所とすることができる。これを仮住所(かりじゅうしょ)という。仮住所は、その取引に関しては住所とみなされる(24条)。
従来の住所または居所を離れて容易に帰ってくる見込みがない者を不在者(ふざいしゃ)と呼ぶ。所在が不明な者だけでなく、海外に長期間滞在しているなど所在が明らかな者も不在者に含まれる。
不在者がそれまでの住所・居所を去った後でそこに残された財産がある場合、不在者の利益や公益のために、その財産を適切に管理する必要が生じる。
不在者がその財産を管理する者(管理人)を置いていき、かつ、不在者本人がその管理人を監督できるのであれば問題ない。
しかし、不在者が管理人を置くとはかぎらないし、また、不在者が管理人を置いた場合であっても、不在者の生死が不明であるときには本人による監督を期待することができない。
そこで、そのような場合に対する措置として、家庭裁判所が不在者に代わってその財産管理に関与する制度が設けられている(25条~29条、家事事件手続法145条以下)。
◆不在者の財産管理制度の要点
(1) 財産管理人の選任
不在者の財産を管理する者(管理人)がいないときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずる(25条1項)。具体的には、管理人を選任する。
(2) 選任管理人の権限・監督
家庭裁判所が選任した管理人(選任管理人)は、法定代理人である。選任管理人は、不在者の財産に関して民法103条に規定する行為(財産の保存・利用・改良)をすることができるほか、その範囲を超える行為が必要なときには、家庭裁判所の許可を得てその行為をすることができる(28条前段)。
選任管理人と不在者との関係は委任に準じるが(家事事件手続法146条6項)、選任管理人は家庭裁判所の監督に服する(27条1項3項・29条)。
(3) 不在者が生死不明の場合の委任管理人の監督・改任
不在者の生死が明らかでない場合、不在者が置いた管理人(委任管理人)は家庭裁判所による監督に服する(27条2項3項・28条後段・29条)。家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、管理人を改任することもできる(26条)。
次の各文を読んで、その内容が正しければ○、間違っていれば✕と答えなさい。
(1) その人が定住の意思をもって住んでいる場所であれば、住所として認められる。
(2) 生活の本拠が明らかでない場合には、住民登録地が住所となる。
(3) 家庭裁判所による不在者の財産管理への関与は、不在者が財産管理人を置かなかった場合だけにかぎられる。
ヒント
(1) 住所として認められるには、その人の生活状況などを総合的に考量して生活の本拠といえる場所であることを要する。
(2) 生活の本拠(住所)が明らかでない場合には、居所が住所とみなされる。
(3) 不在者が財産管理人を置いた場合であっても、不在者の生死が不明であるときは、その管理人は家庭裁判所の監督に服する。
正解
(1) ✕
(2) ✕
(3) ✕
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