このページの最終更新日 2016年2月18日
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代理人が自ら本人を代理するのではなく、代理人が自己の名において選任した者に直接に本人を代理させることも、一定の場合には可能である。これを復代理と言う。民法は、復代理に関していくつかの規定を置いている(104条―107条)。
復代理における当事者の関係を図示すると、次のようになる。復代理人とは、代理人が本人を代理させるために選任した者を指す。復代理人を選任した代理人を本代理人と呼ぶ。
(1) 復代理人の地位
復代理人は、代理人の代理人ではなく、本人の代理人である(107条参照)。すなわち、復代理人のした代理行為の効果は、代理人にではなく、直接本人に帰属する。もっとも、復代理人の権限(復代理権)は、代理人の権限(原代理権)の範囲内にかぎられる。そして、代理人の代理権が消滅することにより、復代理人の代理権もまた消滅する。
(2) 本人と復代理人の関係
復代理人と本人との間には直接の委任契約などはないが、本人は復代理人の代理行為について代理人の場合と同様の利害関係を有している。そこで民法は、便宜上、復代理人は本人に対して代理人と同一の権利義務を有することとしている(107条2項)。したがって、復代理人は、代理行為に際して相手方から受領した金銭その他の物を本人に対して引き渡す義務を負う。
復代理人は、本人に対して受領物の引渡義務を負う一方で、代理人との復委任契約などにもとづいて、代理人に対する引渡義務も依然として負っている。このような場合、復代理人が代理人に対して受領物を引き渡せば、本人に対する引渡義務もまた消滅する(最判昭51.4.9)。
(3) 代理人と復代理人の関係
復代理人は、自己を選任した代理人の監督に服する。なお、復代理は代理権の譲渡ではないので、復代理人選任後も代理人は依然として代理権を有したままである(大判大10.12.6)。
復代理人を選任することができる代理人の権限を復任権と言う。復任権およびそれにともなう代理人の責任の範囲は、任意代理の場合と法定代理の場合とで異なる。
(1) 復任権
任意代理人は、本人から直接信任された者であるから、本来であれば自らが委任事務を遂行するべきである(自己執行義務)。さらに、任意代理人は、いつでも辞任することができる(651条参照)。それゆえ、任意代理人は、原則として復任権を持たない。
例外として、①本人の許諾を得たとき、または、②やむを得ない事由があるときにかぎり、復代理人を選任することができる。(以上、104条)
(2) 代理人の責任
任意代理人は、復代理人の選任および監督について本人に対して責任を負う(105条1項)。ただし、代理人が本人の指名にしたがって復代理人を選任した場合は、復代理人が不適任または不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知することまたは復代理人を解任することを怠ったときでなければ、代理人は責任を負わない(同条2項)。
(1) 復任権
法定代理人は、常に復代理人を選任することができる(106条前段)。法定代理人の権限の範囲は広く、かつ、自由に辞任をすることができないので(844条参照)、本人保護のためにも自由な復任権を認める必要があるからである。
(2) 代理人の責任
法定代理人は、自由な復任権を有することと引き換えに、復代理人の行為について本人に対して全責任を負う(106条前段「自己の責任で」)。ただし、やむを得ない事由によって復代理人を選任した場合は、復代理人の選任・監督についてのみ責任を負う(同条後段)。
以上述べたことを表にまとめると、次のようになる。
【表】任意代理と法定代理の復代理の比較
復任権 | 代理人の責任 | |
任意代理 |
原則として復任権はなく、例外的にのみ認められる(104条参照)。 |
原則として復代理人の選任・監督について責任を負う(105条)。 |
法定代理 | 常に復任権を有する(106条前段)。 | 原則として復代理人の行為について全責任を負う(106条)。 |
復代理人の代理権は、①代理権一般の消滅原因(111条1項)、すなわち、本人の死亡、復代理人の死亡・破産・後見開始によって消滅する。また、②代理人・復代理人間の復委任関係の終了によって消滅する。さらに、③代理人の代理権の消滅(代理人の死亡など)によっても消滅する。
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