このページの最終更新日 2020年12月15日
承認を認定する際には、次のような点に注意が必要です。
(1) 承認には特別の方式・手続きを必要とせず、黙示であっても構いません。したがって、さまざまな行為がひろく承認として認定されます。
判例によって承認として認定された具体例として、次のようなものがあります。
・支払猶予の申入れ(大判昭和2.1.31)
・債務の一部の弁済(大判大正8.12.26―債権全額の承認となる)
・利息の支払い(大判昭和3.3.24―元本債権の承認となる)
・手形書換の承諾(大判昭和13.3.5)
・相殺の主張(最判昭和35.12.23)
(2) 承認は、時効の利益を受ける者によってなされることを要します。
たとえば、物上保証人が債権者に対して被担保債権の存在を承認しても、152条の承認があったとは認められません(最判昭和62.9.3)。したがって、物上保証人は、被担保債権の消滅時効を援用することができます。
(3) 承認は、権利者に対して積極的に表示されることが必要です。
たとえば、銀行が内部の帳簿に利息の元金組入れを記入しても、権利者に対する表示ではないから、預金債権の承認にはあたりません(大判大正5.10.13)。
また、権利者の権利行使に対して異議を述べなかっただけでは承認とはなりません(大判大正10.2.2)。
.2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
承認は、相手方に権利が存在することを認めるだけであり、権利を放棄したり義務を負担したりする行為ではありません。
それゆえ、その権利を処分するときに必要とされる行為能力または権限(代理権)を有することは要求されません(152条2項)。
もっとも、承認も財産を管理する行為である以上は、管理行為をする能力または権限があることが必要であると解されています。
したがって、被保佐人や被補助人は管理能力があるので単独で承認することができますが(大判大正7.10.9)、未成年者や成年被後見人は管理能力がないので単独で有効に承認することができません(大判昭和13.2.4―未成年者の承認は取り消しうる)。
また、権限の定めのない代理人(103条)などは管理権があるので債務者に代わって承認することができますが、権限がまったくない無権代理人は承認することができません。