時効(じこう)は、一定の事実状態が一定期間継続した場合に、その事実状態が真実の権利関係に合致するかどうかにかかわらず、その事実状態を権利関係として認める制度である。
時効には、取得時効と消滅時効の2種類がある。
① 取得時効
取得時効(しゅとくじこう)とは、権利者であるかのような状態を一定期間継続することによって、その者の権利の取得を認めるものである。
たとえば、他人の土地を所有者であるかのように平穏・公然と支配(占有)し続けると、その土地の所有権を取得することができる(162条)。
*物の事実的支配のことを占有という。
② 消滅時効
消滅時効(しょうめつじこう)とは、権利が行使されない状態が一定期間継続することによって、その権利の消滅が認められるものである。
たとえば、債権者が債務の履行を一度も請求せずに年月が経過した場合、債務者は債権の消滅を主張することができる(166条1項)。
取得時効の効果は、権利(所有権およびそれ以外の財産権)の取得である(162条・163条)。
これは原始取得*であって、負担(地役権や抵当権など)のない完全な権利を取得する(289条・397条)。
また、遡及効が認められる結果、時効期間中に時効取得者が行った権利の行使(目的物の侵害に対する損害賠償請求など)は有効となる。
*他人に権利にもとづかない権利の取得。
消滅時効の効果は、権利の消滅である(166条)。
権利消滅にも遡及効が認められる*結果、時効期間中に発生した利息や遅延損害金を支払う義務も消滅する。
なお、時効完成後に債務者が弁済しても、債権者の弁済受領は不当利得とはならない。債務者が時効完成を知っていた場合は弁済が時効利益の放棄と認められ、時効完成を知らなかった場合は援用権を喪失するからである。
*債権の相殺についての例外がある(508条)。
次の各文を読んで、その内容が正しければ〇、間違っていれば✕と答えなさい。
(1) 他人の土地を長期間占有し続けると、その土地の所有者になることがある。
(2) 債権者が金銭の支払いを請求してきても、逃げ続ければ時効によって債権が消滅する。
(3) 元本債権が時効によって消滅した場合であっても、時効期間中に発生した利息を支払う義務は消滅しない。
ヒント
(1) 取得時効(162条)。
(2) 権利者が権利を行使している場合、消滅時効は完成しない。
(3) 時効の遡及効(144条)により、元本債権は遡及的に消滅するので、利息債権も消滅する。
(1) 〇
(2) ✕
(3) ✕