このページの最終更新日 2019年4月16日
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日・週・月・年を単位とする期間は、原則として、初日を算入せずに翌日から起算する。
民法は、140条から143条にかけて、日・週・月・年を単位とする期間(長期間)の計算方法について定めています。
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
日・週・月・年を単位として期間を定めたときは、原則として、期間の初日を算入せずに翌日から起算します(140条本文)。
つまり、期間計算開始の契機となる事実が発生した当日(初日)を切り捨てて、その翌日を計算上最初の1日(起算日)とします。これを初日不算入の原則といいます。
「○○を知った時から5年間」というときは、○○を知った日ではなくて、その翌日が起算日となる。
1日に満たない端数を計算に入れるのは煩わしく不便であり、また、期間が開始した時刻を正確に証明することは困難です。
そのため、初日は全部算入するかしないかの選択になりますが、法律上期間の経過は当事者の不利益となる場合が多いので、民法は期間の満了が遅くなる不算入のほうを採用しています(延長的計算法)。
したがって、期間が午前零時から始まる場合は、初日が丸1日あるので、例外的に初日から起算することになります(140条ただし書)。
「翌月10日から3か月」というときは、初日である10日を第1日として数える。
民法724条所定の3年の時効期間の計算についても140条の適用があるから、被害者等が損害および加害者を知った時が午前零時でないかぎり、時効期間の初日は算入されません(最判昭和57.10.19)。
民法以外の法律によって初日不算入の原則に対する例外が定められていることがあります。
その一例として、年齢計算ニ関スル法律1項は、年齢は出生の日から起算すると定めています。
4月1日に生まれた子は、(翌日の2日ではなく)1日を起算日として年齢を計算するので、翌年3月31日(誕生日の前日)の終了をもって満1歳となる。
〔4月1日生まれの子の入学時期はいつか〕
学校教育法によって、保護者は、子が満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから子を小学校に就学させる義務を負うと定められています(同法17条1項)。
そして、小学校の学年は4月1日に始まります(同法施行規則59条)。
つまり、満6歳に達した日の翌日から最初の4月1日が到来するときに小学校1年生となります。
本文計算例3のように、4月1日生まれの子は誕生日前日の3月31日(の終了時)に満6歳になるので、満6歳に達した日(3月31日)の翌日が最初に到来する4月1日になります。
したがって、4月1日生まれの子は満6歳になった年に始まる学年に入学することになります(いわゆる「早生まれ」の扱い)。
これに対して、4月2日に生まれた子は、4月1日に満6歳になるので、満6歳に達した日の翌日(4月2日)以後における最初の学年の初めである翌年の4月1日に小学校1年生となります(いわゆる「遅生まれ」の扱い)。
週・月・年を単位とする期間は、暦に従って計算する。
期間は、その末日の終了、すなわち午後12時の経過をもって満了します(141条)。
前条〔140条〕の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
これは、起算点に関して初日不算入の原則を採用したことに対応しています。
商法520条は「法令又は慣習により商人の取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、債務の履行をし、又はその履行の請求をすることができる」と定めており、同条が適用される場面においては、末日の取引時間の経過によって事実上期間が満了します。
期間の末日(満了日)は、次のようにして定まります。
日を単位とする期間は、起算日から所定の日数を数えて最後の日に満了します。
「2020年2月20日から10日間」というときは、2月20日を起算日(1日目)として10日を数え、10日目にあたる同月29日が満了日となる。(閏年の2020年ではなく平年であれば、3月1日が満了日となる。)
月または年を単位として期間を定めたときは、「暦に従って」、すなわち月・年を日数に換算せずにそのまま数えます(143条1項)。
その際、月の大小や年の平閏は無視して、すべての月・年を均一なものとして扱います。
1 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
(1) 月・年の初めから起算するときは、単純にその月・年を第1の月・年として所定の月数・年数を数え、最後にあたる月・年の末日に期間が満了すると考えます。
「2月1日から3か月間」というときは、年の平閏や月の大小にかかわらず、2月を最初の月として月数を数え、3月目の4月の末日が満了日になる。
「2020年1月1日から5年間」というときは、平年か閏年かにかかわらず、2020年を最初の年として年数を数え、5年目の2024年の末日が満了日になる。
(2) 月・年の途中から起算するときは、月・年に満たない端数の処理が問題となります。この点につき、民法は次のような方法を採ることとしました。
すなわち、140条による起算日の翌月・翌年から月数・年数を数え、最後の月・年においてその起算日に当たる日(応当日)の前日に期間が満了します(143条2項本文)。
「1月15日から5か月間」というときは、翌月から数えて5月目の6月15日が応当日であるから、その前日の同月14日が満了日となる。
「2020年10月5日から3年間」というときは、翌年から数えて3年目の2023年10月5日が応当日であるから、その前日の同月4日が満了日となる。
(3) 月には大小があり、また、年には平閏があるために、最後の月に応当日がないときがあります。そのようなときは、その最後の月の末日に満了します(143条2項ただし書)。
「1月31日から1か月間」というときは、翌月の2月には応当日(31日)がないから、同月28日(または29日)が満了日となる。
「2020年2月29日から2年間」というときは、翌年から数えて2年目の2022年2月には応当日(29日)がないから、同月28日が満了日となる。
週を単位とする期間の場合についても、月・年を単位とする期間の場合と同様に暦にしたがって、すなわち日数に換算せずに計算します(143条1項)。
もっとも、週を単位とする場合には、月・年を単位とする場合とは異なり、日数に換算しても計算結果が異ならず、また、応当日が存在しないという問題は生じません。
「5月5日(木曜日)から3週間」というときは、翌週から数えて3週目にあたる5月26日(第4週木曜日)が応当日となるから、その前日の同月25日(水曜日)が満了日となる。
期間の末日が日曜日、祝日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合にかぎり、その翌日に期間が満了します(142条)。
142条に「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」と限定的な文言があるのば、立法当時の日本社会には休日に業務を行わない慣習が確立していなかったためです。また、「取引」とは、期間が定められている行為を指します。
「2019年1月1日から3か月間」というときは、本来の満了日である3月31日は日曜日に当たるので、その翌日の4月1日(月曜日)が満了日となる。
なお、年末年始の休業期間が休日に含まれるかどうかが問題となります。
判例は、正月三が日(1月1日・2日・3日)は休日にあたるが(最大判昭和33.6.2)、年末の3日(12月29日・30日・31日)は休日にあたらないとします。
民事訴訟法95条3項のように立法的に解決している例もあります。
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