このページの最終更新日 2015年9月30日
期限とは、法律行為の効力の発生、消滅または債務の履行期の到来を将来発生することが確実な事実にかからせる法律行為の附款をいう。また、そのような事実を期限と呼ぶこともある。
期限となる事実は、将来発生することが確実な事実である。この点で、将来発生するかどうかが不確実な事実である条件と異なる。もっとも、出世払い約款のように、条件と期限のいずれであるかの判別が容易でない場合もある。
〔考察〕出世払い
将来自分が出世(成功)したときに返済する旨の約束をして借金をした場合(いわゆる出世払い約款)、このような特約は条件と期限のいずれであるかが問題となる。もし、出世しないときは返済の必要がないという趣旨であれば条件(停止条件)であると解されるが、出世した時または出世しないことが確定した時に履行期が到来するという趣旨であれば期限(不確定期限)と解することになる。個々の事案ごとに具体的に判断すべきであるが、判例は出世払い特約を不確定期限と解する傾向がある(大判大4.3.24など)。
法律効果が直ちに発生することを必要とする行為(婚姻、養子縁組など)には、期限を付けることができないと解される。また、遡及効のある行為に期限を付けることも(無意味であるから)認められない。(相殺に関しては明文がある――506条1項ただし書。)
期限には、次のような種類がある。
(1) 確定期限・不確定期限
たとえば、「来月末に代金を支払う」というように、到来する時期が確定している期限を確定期限という。また、「父親が死んだら借金を返す」というように、到来することは確実であるが、その時期が不確定である期限を不確定期限という。
(2) 始期・終期
たとえば、「来月1日から賃貸する」「今月末に借金を返済する」というように、法律行為の効力の発生または債務の履行期の到来にかかる期限を始期という。これに対して、たとえば、「2年間建物を賃貸する」という場合のように、法律行為の効力の消滅にかかる期限を終期という。
期限の利益の効果は、期限の種類によって異なる。
①債務の履行に始期を付けた場合(履行期限)は、期限の到来によって債務の履行を請求することができる(135条1項)。また、②法律行為に終期をつけた場合、期限の到来により法律行為の効力が消滅し(同条2項)、③明文の規定はないが、法律行為の効力に始期を付けた場合は、期限の到来により法律行為の効力が発生する。
期限の効力は、将来に向かってのみ生ずる。特約によって遡及効を定めることも(自己矛盾あるいは無意味であるから)認められない。
〔考察〕期限到来前の効力(期限付権利)
債務の履行に始期が付けられている場合は、すでに債権が発生しているので債権一般の保護を考えれば足りる。これに対し、法律行為の効力の発生または消滅に期限が付けられている場合には、期限の到来に対する期待を保護する規定が存在しない。しかし、期限の到来に対する期待は、条件成就に対する期待(条件付権利)以上の保護を受けるべき(確定的な期待は不確定的な期待より強い保護を受けるべき)であるから、条件に関する128条および129条を類推適用すべきであると解されている。