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法人の機関と代表

このページの最終更新日:2019年3月22日

法人の機関

法人の機関とは何か

法人は、自然人のする意思決定や行為を介することによって活動することができる。

法人としての意思決定や行為を行うことができる地位にある自然人や会議体を法人の機関(きかん)と呼ぶ。

法人の機関の構成は法人の種類によって異なる。同種の法人であっても、その規模や目的に応じて機関設計に違いが生じることがある。

ここでは、非営利法人の代表である一般社団法人および一般財団法人の機関を取り上げる。

一般社団法人の機関

一般社団法人の場合には、機関設計のしかたが5通りある。

(1) 社員総会と理事

一般社団法人には、その構成員である社員(しゃいん)が存在する。

法人の意思決定は社員の総意によるが、そのために社員全員によって構成される機関である社員総会(しゃいんそうかい)が置かれる(一般法人法35条以下)。

そして、その意思決定にもとづき業務を執行する機関として理事(りじ)が置かれる(同法60条1項・76条1項)。

以上の二つの機関は必ず設置しなければならない。

◆株式会社の機関

営利法人の代表である株式会社にも、一般社団法人における社員総会・理事のような意思決定機関および業務執行機関が存在し、それぞれ株主総会(かぶぬしそうかい)・取締役(とりしまりやく)と呼ぶ(会社法295条以下・326条1項)。

(2) 理事会・監事・会計監査人

一般社団法人は、定款ていかんに定めることによってさらに、意思決定過程を合理化するための機関である理事会(りじかい)や監査機関である監事(かんじ)・会計監査人(かいけいかんさにん)を設置することができる(同法60条2項)。

これらの機関を設置するかどうかは、原則として法人の自治に委ねられている。ただし、理事会あるいは会計監査人を設置する場合には、必ず監事も置く(同法61条)。

なお、大規模な法人の場合には、必ず監事・会計監査人を置かなければならない(同法62条)。

(3) 理事会の有無と社員総会の権限

理事会が設置されていない法人においては、社員総会は法人に関する一切の事項について決議をすることができる万能の意思決定機関である(一般法人法35条1項)。

これに対して、理事会が設置されている法人においては、業務執行の決定や代表理事の選定・解職が理事会の職務権限とされ、社員総会の決議権限は法律または定款に定める事項に制限される(同法35条2項・90条2項)。

一般財団法人の機関

一般財団法人は、一般社団法人と異なり社員が存在せず、法人の根本的な意思決定は設立者が作成する定款(または遺言)によってなされる(一般法人法152条)。

したがって、一般社団法人の社員・社員総会に相当する機関として3人以上の評議員(ひょうぎいん)と評議員会(ひょうぎいんかい)を必ず設置するが、社員総会と異なり、定款の目的等の変更(同法200条1項)や解散を決議する権限はない(同法202条参考)。

また、業務執行機関としての理事(3人以上)・理事会と、監査機関としての監事は必置である(同法170条)。

会計監査人の設置は原則として任意であるが、大規模な法人の場合には必置機関となる(同法171条)。

もっと知る

●法人と理事との関係

(1) 法人と理事との間の法律関係には、委任の規定が適用される(一般法人法64条・172条1項)。したがって、理事は、その職務を行うに際して善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)を負う(644条)。(一般法人法83条・197条が定める理事の忠実義務(ちゅうじつぎむ)も、この善管注意義務と同一の義務であると解される。)

(2) また、理事は、法人と競業する取引や利益相反する取引を行うことが制限される(利益相反行為の制限、一般法人法84条1項・92条1項・197条)。

(3) さらに、理事は、その任務を怠ったことにより法人に損害を与えたときは、法人に対して損害賠償責任を負う(一般法人法111条1項・198条)。

なお、会社と取締役との関係は、一般社団法人における法人と理事との関係とほぼ同様である。

法人の代表

法人の代表とは何か

法人の活動は、現実にはその業務執行機関である自然人が担う。

法人の業務執行機関は、内部的および対外的に法人の業務を執行する。このうち対外的な業務執行を代表といい、対外的な関係で業務執行権限を有する者(機関)を法人の代表者(代表機関)と呼ぶ。

法人と代表者との関係は、代表者が法人の機関として第三者との間でした行為の効果が法人に帰属するという関係にある。このような代表の法律関係は、代理の関係に準じて処理される*。

*「代表」については代理と同様に考えてよく、両者を厳密に区別する必要はない。

以下、一般社団法人・一般財団法人の代表者について説明する。

◆株式会社の代表者

株式会社の代表者は、取締役ないし代表取締役(だいひょうとりしまりやく)である。一般社団法人の代表者に関する説明は、株式会社の代表者についても当てはまる。つまり、以下の解説文中の「理事・理事会・代表理事」などを「取締役・取締役会・代表取締役」などに置きかえればよい。

代表者の選任

(1) 理事会を設置していない場合

一般社団法人の代表者は、理事である(一般法人法77条1項)。理事が複数いるときは、代表理事が選任された場合を除き、各自が法人を代表する(一般法人法77条2項)。

定款、定款の定めにもとづく理事の互選または社員総会の決議によって、理事のなかから代表理事を定めることができる(一般法人法77条3項)。

代表理事を定めた場合は、その他の理事は法人を代表することができない。

(2) 理事会を設置している場合

理事会または取締役会を設置している場合(一般財団法人は理事会が必置)には、その決議によって理事のなかから代表理事を選定しなければならない(一般法人法90条3項・197条)。

◆表見代表理事

代表理事以外の理事に対して、「理事長」などのように法人を代表する権限を有すると認められる名称を与えた場合、その理事がした行為について、法人は善意の第三者に対してその責任を負う(一般法人法82条・197条)。

◆理事以外の法人代表者

法人内部の訴訟における法人の代表者は、社員総会で定めた者、または、監事である(一般法人法81条・104条・197条)。また、清算法人の代表者は、清算人である(一般法人法214条1項)。

代表者の権限

(1) 包括代表権

法人の代表者は法人内外の業務を執行するが、対外的な業務を円滑に執行するために広範な代表権を有する。

代表者の代表権の範囲は、原則として法人の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ(一般法人法77条4項・197条)。代表権はこのように包括的な権限であるだけでなく、後述するように内部的な制限を加えても善意の第三者に対抗できないという意味で不可制限的なものとされている(一般法人法77条5項・197条)。

包括代表権は、他人を法人の代理人として選任する権限(復任権)を含む。これによって代表者は、特定の行為の代理を他人に委任することができる。もっとも、定款や総会決議によって復任権を制限することも可能である(特定非営利活動促進法17条の2参照)。

◆決議にもとづかない行為の効力

理事の業務執行は、社員総会や理事会の決議、または、理事の多数決にもとづいて行われるのが原則である(一般社団法人76条2項・90条2項・197条)。法人の代表者の対外的行為もこれらの決議にもとづいて行われなければならない。もっとも、これらの決議にもとづかずになされた代表者の行為の効力に関する規定はない。

(2) 単独代表の原則

代表者が複数いる場合でも、各自が単独で法人を代表する。共同代表(数人が共同してのみ法人を代表できる)の定めをすることはできるが、代表権の内部的制限にすぎず、善意の第三者に対抗することはできない(後述)。

代表者の義務

法人の代表者は、理事としての一般的な義務を負うほか、利益相反行為が制限される。

次のような取引は、法人と代表者との利益が相反する行為(利益相反行為)であって、代表者が自己または第三者の利益を図って法人の利益を害するおそれが大きい。

① 代表者が自己または第三者のために法人の事業の部類に属する取引をする場合(競業取引)

② 代表者が自己または第三者のために法人と取引するような場合(直接取引)

③ 法人が代表者の債務を保証するなど代表者以外の者との間において法人と代表者との利益が相反する取引をする場合(間接取引)

そのため、これらの取引については、社員総会または理事会などの事前の承認を得なければならないなどの特別の規制がなされている(一般法人法84条1項・92条1項・197条)。

◆利益相反取引の効力

代表者が、事前の承認を得ずに、上記②③のような取引(利益相反取引)を行った場合、その取引の効力はどうなるか。

平成18年改正前民法57条は、「法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない」と規定していたので、民法上、利益相反取引は無権代理行為であると解されていた。

しかし、会社法上は、取締役会等の承認を得ない利益相反取引の効力に関する規定はなく、当該取引は無効であるが、会社が第三者に対してその無効を主張するためには、第三者の悪意(承認がないことを知っていること)を立証しなければならない、と解されている(相対的無効)。

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