法人は、自然人のする意思決定や行為を介することによって活動することができる。
法人としての意思決定や行為を行うことができる地位にある自然人や会議体を法人の機関(きかん)と呼ぶ。
法人の機関の構成は法人の種類によって異なる。同種の法人であっても、その規模や目的に応じて機関設計に違いが生じることがある。
ここでは、非営利法人の代表である一般社団法人および一般財団法人の機関を取り上げる。
一般社団法人の場合には、機関設計のしかたが5通りある。
(1) 社員総会と理事
一般社団法人には、その構成員である社員(しゃいん)が存在する。
法人の意思決定は社員の総意によるが、そのために社員全員によって構成される機関である社員総会(しゃいんそうかい)が置かれる(一般法人法35条以下)。
そして、その意思決定にもとづき業務を執行する機関として理事(りじ)が置かれる(同法60条1項・76条1項)。
以上の二つの機関は必ず設置しなければならない。
◆株式会社の機関
営利法人の代表である株式会社にも、一般社団法人における社員総会・理事のような意思決定機関および業務執行機関が存在し、それぞれ株主総会(かぶぬしそうかい)・取締役(とりしまりやく)と呼ぶ(会社法295条以下・326条1項)。
(2) 理事会・監事・会計監査人
一般社団法人は、定款に定めることによってさらに、意思決定過程を合理化するための機関である理事会(りじかい)や監査機関である監事(かんじ)・会計監査人(かいけいかんさにん)を設置することができる(同法60条2項)。
これらの機関を設置するかどうかは、原則として法人の自治に委ねられている。ただし、理事会あるいは会計監査人を設置する場合には、必ず監事も置く(同法61条)。
なお、大規模な法人の場合には、必ず監事・会計監査人を置かなければならない(同法62条)。
(3) 理事会の有無と社員総会の権限
理事会が設置されていない法人においては、社員総会は法人に関する一切の事項について決議をすることができる万能の意思決定機関である(一般法人法35条1項)。
これに対して、理事会が設置されている法人においては、業務執行の決定や代表理事の選定・解職が理事会の職務権限とされ、社員総会の決議権限は法律または定款に定める事項に制限される(同法35条2項・90条2項)。
一般財団法人は、一般社団法人と異なり社員が存在せず、法人の根本的な意思決定は設立者が作成する定款(または遺言)によってなされる(一般法人法152条)。
したがって、一般社団法人の社員・社員総会に相当する機関として3人以上の評議員(ひょうぎいん)と評議員会(ひょうぎいんかい)を必ず設置するが、社員総会と異なり、定款の目的等の変更(同法200条1項)や解散を決議する権限はない(同法202条参考)。
また、業務執行機関としての理事(3人以上)・理事会と、監査機関としての監事は必置である(同法170条)。
会計監査人の設置は原則として任意であるが、大規模な法人の場合には必置機関となる(同法171条)。
法人と理事との関係
(1) 法人と理事との間の法律関係には、委任の規定が適用される(一般法人法64条・172条1項)。したがって、理事は、その職務を行うに際して善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)を負う(644条)。(一般法人法83条・197条が定める理事の忠実義務(ちゅうじつぎむ)も、この善管注意義務と同一の義務であると解される。)
(2) また、理事は、法人と競業する取引や利益相反する取引を行うことが制限される(利益相反行為の制限、一般法人法84条1項・92条1項・197条)。
(3) さらに、理事は、その任務を怠ったことにより法人に損害を与えたときは、法人に対して損害賠償責任を負う(一般法人法111条1項・198条)。
なお、会社と取締役との関係は、一般社団法人における法人と理事との関係とほぼ同様である。