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法人法の体系と法人の設立

このページの最終更新日:2019年10月11日

法人法の体系

法人法定主義

法人は、法律の規定によらなければ成立しない(33条1項)。

つまり、法人を設立するためにはそれを認める法律上の根拠が必要であって(法人法定主義)、法人とするのが適当な実体が存在すれば当然に法人格が認められるというわけではない*。

*スイス民法のように、後者の立法主義=自由設立主義を採用する国もある。

現在、各種の特別法によってさまざまな種類の法人が認められている。以下にその例をいくつか列挙する(かっこ内は、法律上の根拠=設立根拠法)。

  • 会社(会社法)
  • 一般社団法人・一般財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)
  • NPO法人(特定非営利活動促進法)
  • 学校法人(私立学校法)
  • 宗教法人(宗教法人法)
  • 医療法人(医療法)
  • 社会福祉法人(社会福祉法)
  • 農業協同組合・生活協同組合・信用金庫等(農業協同組合法・消費生活協同組合法・信用金庫法等)
  • 労働組合(労働組合法)
  • 健康保険組合(健康保険法)
  • 弁護士法人・監査法人・税理士法人等(弁護士法・公認会計士法・税理士法等)
  • 管理組合法人(建物の区分所有等に関する法律)
  • 相続財産法人(民法951条)
  • 認可地縁にんかちえん団体(地方自治法260条の2)

法人の多くは、その名称中に法人の種類を表す文字を使用している。一般社団法人や会社のように義務づけられている場合もある(一般法人法5条、会社法6条)。

◆公法人(こうほうじん)

法人は、公法と私法のいずれに準拠して設立されたかによって公法人と私法人とに区別される。公法人には、特定の行政目的のために設立された法人のほか、広義では国や地方公共団体も含まれる。公法人も、私法上の法律関係においては私人と対等の立場に立ち、私法の適用を受ける。

◆外国法人(がいこくほうじん)

外国法に準拠して設立された法人を外国法人と呼ぶ。外国法人であっても、わが国における法人格が承認(認許)されたものは、同種の内国法人と同一の権利能力を有する。ただし、外国人に対するのと同様の制限などがある(35条)。

なお、外国法人も登記の義務を負う(36条・37条)。

法人法の変遷

法人制度は当初、民法が規律する(旧)公益法人(こうえきほうじん)*と商法が規律する営利法人とに二分されていた。

*公益、すなわち不特定多数人の利益を図ることを目的とし、営利を目的としない法人。

法人格を取得することができる団体は公益目的か営利目的のものにかぎられ、そのどちらでもない団体は(法人として認めるための個別法が存在しないかぎり)法人になることができなかった。

その空白を埋めるために、平成13年に中間法人(ちゅうかんほうじん)が新設されて、社員に共通する利益を図ることを目的とする非営利団体(業界団体・同窓会・老人会など)にも法人格の取得が認められるようになった。

その後、平成17年には、商法典から会社に関する規定が独立して「会社法」となった。

さらに、平成18年の公益法人制度改革関連三法の制定により、広く非営利目的の団体一般にも法人格取得の道が開かれるにいたった(「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」)。同時に、中間法人法が廃止され、民法典の公益法人に関する規定も削除された。

現行法の下では、一般社団法人・一般財団法人として設立されたもののうち、行政庁(内閣総理大臣および都道府県知事)による公益認定を受けたもののみが公益法人と呼ばれる(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律2条~4条参照)。

以上見てきたように、各々の種類の法人に関する具体的な内容の規律は各種の特別法(一般法人法、会社法、NPO法など)に委ねられており、民法典には法人に関する通則的な規定がわずか五つだけ(33条から37条まで)残っているにすぎない。

【図】法人法改正

【図】法人法改正

法人の設立と消滅

法人の設立

法人は、その種類ごとに異なった方式によって設立される(次表参照)。

【表】法人設立の方式

特許とっきょ主義 特定の法人設立のために特別な立法が必要(例、日本銀行、日本放送協会、日本年金機構)
許可きょか主義 主務官庁の裁量的判断である許可が必要(例、旧公益法人)
認可にんか主義 行政庁の裁量権のない処分である認可が必要(例、各種協同組合、学校法人、医療法人、社会福祉法人)
認証にんしょう主義 所轄庁の確認行為である認証が必要(例、宗教法人、NPO法人)
準則じゅんそく主義 法律が定める要件・手続きを満たせば、当然に法人格が付与される(例、一般社団法人・一般財団法人、会社、労働組合)
当然設立とうぜんせつりつ主義 法律上当然に法人となる(例、国、地方公共団体、相続財産法人)
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◆準則主義(じゅんそくしゅぎ)

一般社団法人・一般財団法人および会社の設立手続きは、一般法人法や会社法に準拠じゅんきょして行われる(一般法人法11条~26条・152条~169条、会社法25条~103条・575条~579条)。

法が定めた設立手続きを進めていくことで法人としての実体が徐々に形成されていくが、実体の形成だけではまだ法人として成立しない。

最終的に設立の登記をすることによってはじめて法人格を取得することができる(一般法人法22条・163条、会社法49条・579条)。

法人の実体の形成は、①定款ていかんの作成、②設立時機関の選任、③財産的基礎の形成という三つのプロセスを経る。

① 定款の作成

定款は、団体の根本規則である。定款が効力を生じるには、公証人の認証を受けることが必要である。

② 設立時機関の選任

法人の設立時の機関を選任する。設立時機関は、選任後すぐに設立手続きを調査する。

③ 財産的基礎の形成

一般財団法人と会社(株式会社・合同会社)の場合は、金銭の払込みや財産の給付を行うことによって法人の財産的基礎を形成する必要がある。

一般財団法人の場合は拠出する財産の価額は300万円を下回ることができない(一般法人法153条2項)が、会社の場合には出資の最低額(最低資本金)に関する規制が存在しない。

法人の消滅

法人がその存立の基礎・理由を失った場合には、その存続を終了させるために、残された法律関係を整理する手続きに入る。(法人の解散事由は、法人の種類や業種によって異なります。)

これを法人の解散(かいさん)といい、解散後の残務整理の手続き(現在の業務の完了、債権の取り立て、債務の弁済、残余財産の引渡しなど)を法人の清算(せいさん)という。

法人はその解散後も、清算が結了けつりょう(終了)するまではなお存続するものとみなされる。これを清算法人・清算会社という(一般法人法207条、会社法476条・645条)。清算法人・清算会社は、解散前の法人と同一性を有するものの、権利能力の範囲が清算の目的の範囲内に限定される。

清算手続の結了によって、法人は完全に消滅する。

練習問題

正誤問題

次の各文を読んで、その内容が正しければ○、間違っていれば✕と答えなさい。

(1) 法人は、法律によって定められた以外のものであっても、自由に設立することができる。

(2) 公益目的でも営利目的でもない団体は、法人となることができない。

(3) 一般社団法人や会社は、法律が定める要件・手続きを満たせば、当然に法人格が付与される。

ヒント

(1) 法人の設立には、法律上の根拠が必要である(法人法定主義)。

(2) 公益を目的とせず、また、営利を目的としない団体であっても、法人となることは可能である。

(3) 一般社団法人や会社を設立するには、法定の要件を満たすように設立手続きを進めれば足り、行政庁による許認可を必要としない(準則主義)。

正解

(1) ✕

(2) ✕

(3) ○

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