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強行規定違反

このページの最終更新日 2015年9月29日

公の秩序に関する規定

法律行為の内容の適法性

法律行為の内容は、適法なものでなければならない。法律行為の内容が法秩序の観点から許容することができないとき、その法律行為は無効となる。

民法はこの原則を明確な表現で規定してはいないが、91条を根拠規定とする考え方が一般的である。91条は公の秩序に関しない規定は当事者の意思表示(特約)によって排除できる旨を規定しているが、同条を反対解釈すると、公の秩序に関する規定は当事者の特約によって排除できないという趣旨を読み取ることができるからである。これに対して、91条ではなく90条を根拠とする考え方もある。

強行規定と任意規定の区別

ところで、91条の文言から、法令中の規定には公の秩序に関するものとそうでないものがあることが推察できる。公の秩序に関する規定を強行規定(強行法規)と呼び、公の秩序に関しない規定を任意規定(任意法規)と呼ぶ。強行規定に違反する特約は無効であるが、任意規定は特約によってその適用を排除することができる。

ある規定が強行規定であるか任意規定であるかは、個々の規定ごとに判断される。法律上、強行規定である旨が明記されている場合(借地借家法9条・16条・21条など)や、任意規定である旨が明記されている場合(466条2項、474条1項など)は明白であるが、多くの場合にはいずれであるかを規定の趣旨から判断するしかない。

民法総則(民法第1編)には強行規定が多く、物権法(第2編)や家族法(第4編・第5編)の規定のほとんどは強行規定である。債権法(第3編)は任意規定が多い。

取締規定違反

行政上の取締り目的から一定の行為を禁止または制限する規定を取締規定と呼ぶ。取締規定に違反すると、刑罰や行政処分などの制裁を科される。しかし、そのことと、違反した行為(契約)の(私法的な)効力まで否定されるかどうかは別問題である。取締規定違反行為の効力をどのように判断するべきかという問題について、二つの異なったアプローチのしかたがある。

① 効力規定か否かによって判断する立場

この立場は、違反した規定の性質によって契約の効力を決定する。その規定に違反することによって契約の効力が否定されるような取締規定を効力規定と呼ぶ。効力規定に違反した契約は無効となるが、それ以外の取締規定に違反した契約は有効となる。

〔参考〕効力規定と強行規定の違い

効力規定はそれ以外の(契約の効力に影響しない)取締規定に対置される概念である。これに対して、強行規定は任意規定に対置される概念である。効力規定は強行規定の一種であるが、取締規定のすべてが強行規定としての性質を有するわけではない。なお、効力規定でない取締規定を「単なる取締規定」と呼ぶことがある。

② 民法90条を援用する立場

取締規定違反の契約の効力を、公序良俗違反(90条)の問題として処理する立場である。契約の効力を具体的事案に即して総合的に判断することになるので、抽象的に効力規定か否かを決定するよりも柔軟な問題解決が可能となる。判例の中には、取締規定違反の契約について、効力規定違反ではなく、90条違反を理由に無効とするものもある(最判昭39.1.23―食品衛生法違反、最判昭38.6.13―弁護士法違反)。

〔参考〕取締規定違反行為の例

(1) 無免許営業

特定の事業を営むことをそのための資格のある者に制限している場合において、その資格なしに営業する行為である。無資格者の営業行為は、原則として有効である。取締目的が営業資格を制限することであって、営業行為自体を制限することではないからである。たとえば、食品衛生法の許可のない販売業者がした精肉の購入は有効である(最判昭35.3.18)。独占禁止法違反の貸付契約について私法上の効力を否定しなかった判例もある(最判昭52.6.20)。もっとも、公益性が強い資格であれば無効となることもある。(前掲最判昭38.6.13は、非弁行為(弁護士法72条違反)を90条違反によって無効とした。)

(2) 名義貸し

営業の資格のある者がその名義を無資格者に貸与する契約である。これを許すと取締目的を達成することができないので、無効である。戦前の鉱業における「斤先堀きんさきぼり」契約が適例(大判昭19.10.24)。名義借主の営業は、無免許営業である。

(3) 取引規制に違反する行為

取引自体の規制を目的とする取締規定に違反する行為である。行為の効力は、規定ごとに判断すべきである。90条を援用して無効とする場合もある。(前掲最判昭39.1.23は、食品衛生法違反と知りながら有毒物質が混入したアラレを製造・販売したという事案において、取引を90条違反により無効とした。)

脱法行為の効力

法が直接禁じている以外の手段によって、禁止されている内容を実質的に達成する行為を脱法行為と呼ぶ。いわば法の抜け道である。脱法行為は、無効であると考えられている。明文で脱法行為を封じていることもある(例、利息制限法3条)。

形式的に強行規定の適用を回避する行為のなかには、法が経済取引における実際の需要に応えなかったために、やむなく取引慣行として生じたものも存在する。譲渡担保がその好例である。そのような行為は、たしかに実質的には強行規定に違反するものであるが、その経済的合理性から法的に許容されると考えられており、したがって、脱法行為ではないとされる。

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