法律行為の内容は、適法なものでなければならない。法律行為の内容が法秩序の観点から許容することができないとき、その法律行為は無効となる。
民法はこの原則を明確な表現で規定してはいないが、91条を根拠規定とする考え方が一般的である。91条は公の秩序に関しない規定は当事者の意思表示(特約)によって排除できる旨を規定しているが、同条を反対解釈すると、公の秩序に関する規定は当事者の特約によって排除できないという趣旨を読み取ることができるからである。これに対して、91条ではなく90条を根拠とする考え方もある。
ところで、91条の文言から、法令中の規定には公の秩序に関するものとそうでないものがあることが推察できる。公の秩序に関する規定を強行規定(強行法規)と呼び、公の秩序に関しない規定を任意規定(任意法規)と呼ぶ。強行規定に違反する特約は無効であるが、任意規定は特約によってその適用を排除することができる。
ある規定が強行規定であるか任意規定であるかは、個々の規定ごとに判断される。法律上、強行規定である旨が明記されている場合(借地借家法9条・16条・21条など)や、任意規定である旨が明記されている場合(466条2項、474条1項など)は明白であるが、多くの場合にはいずれであるかを規定の趣旨から判断するしかない。
民法総則(民法第1編)には強行規定が多く、物権法(第2編)や家族法(第4編・第5編)の規定のほとんどは強行規定である。債権法(第3編)は任意規定が多い。