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法律行為の有効性

このページの最終更新日 2015年9月26日

法律行為の要件

法律行為によって法律効果を発生させるためには、さまざまな要件を充足しなければならない。それらの要件をまとめると次のようになる。それぞれの要件についてのくわしい解説は、当該要件に関連するページを参照してほしい。

(1) 成立要件

法律行為が成立するには、当事者の意思表示が必要である。契約の場合には、申込みと承諾の意思表示の合致(合意)がなければならない。

法律行為によっては、意思表示に加えて目的物の授受(要物契約)や一定の方式でなされること(要式行為)が成立要件とされるものもある。

意思表示が外形的にも存在しない場合には、法律行為は不成立となる。

(2) 有効要件

法律行為が有効であること、すなわち、無効原因や取消原因が存在しないことが必要である。

法律行為の有効要件は、法律行為の内容に関する要件(客観的有効要件)と意思表示に関する要件(主観的有効要件)とに分けることができる。前者については後述する。

後者の要件としては、権利能力・意思能力・行為能力の存在、意思表示に瑕疵がないこと(意思の不存在・瑕疵ある意思表示でないこと)が挙げられる。

(3) 効果帰属要件

行為者が自己ではなく他人のために法律行為を行った場合に、その行為の効果を他人に帰属させるためには代理権や処分権が存在しなければならない。これらの権限のない行為は、効果不帰属となるのが原則である。

(4) 効力発生要件

法律行為が有効に成立しても、その効力の発生が一定の事実にかかっていることがある。それには、当事者の意思表示によるもの(条件・期限)と、法律の規定によるもの(例、表意者の死亡―985条)とがある。効力発生要件が定められているときは、一定の事実が生じないかぎり、法律行為の効力が発生しない。

内容に関する有効要件

法律行為が効力を有すると、その内容どおりの法律効果、すなわち権利・義務が生じる。そして、国家権力がその権利・義務の実現に助力することになる。しかし、法律行為の内容の確定や実現が不可能であったり、違法または反社会的な内容であったりしたときにまでその実現に助力することはできない。したがって、そのような場合には、法律行為の効力は無効とされて法律効果は発生しない。

法律行為の内容に関する有効要件として挙げられるのは、一般に次の四つである。

① 確定性

② 実現可能性

③ 適法性

④ 社会的妥当性

適法性と社会的妥当性の要件については別のページで解説する。以下、確定性と実現可能性の要件について扱う。

確定性

法律行為の内容は、確定できるものであることを要する(確定性の要件)。内容を確定することができない法律行為は無効である。明文の規定はないが、法律行為の効果が不明である以上、無効とするのが適当である。

法律行為の内容の全部が確定している必要はなく、重要な部分が確定できるのであれば有効である。法律行為時には確定していなくても、当事者が定めた方法や法律行為の解釈によって確定できるのであれば、有効としてよい。たとえば、代金の額を定めていない売買契約も有効であるとされる。

実現可能性

1 実現可能性の要件

法律行為の内容は、実現できるものでなければならない(実現可能性の要件)。内容の実現が不可能な法律行為は無効である。この原則も明文の規定がないが、伝統的に認められてきたものである。法的効果を認める意味がないからと説明されたりするが、けっしてこの原則が自明のものであるわけではない。有効とする説も有力である。

実現不可能(不能)か否かは、物理的な観点だけでなく、社会通念的な観点からも判断される。たとえば、目的物の焼失は物理的に引渡しができない不能(事実上の不能)であり、また、麻薬の売買は法律で禁止されている不能(法律上の不能)である。

2 原始的不能と後発的不能

法律行為(契約)が無効となるのは、法律行為成立(契約締結)の時点で実現が不可能である場合にかぎられる。この場合を原始的不能と呼ぶ。契約締結の時点で実現可能であったのが後に不可能となった場合は、契約は無効ではない。この場合を後発的不能と呼ぶ。

たとえば、ある家屋の売買契約を締結したが、その家屋は明渡し前に売主の不注意によって全焼していたという場合、家屋の焼失が契約締結前であれば、原始的不能であるから売買契約は無効となる。しかし、もし家屋の焼失が契約締結後であれば、後発的不能であるから売買契約は有効となり、あとは債務不履行の問題となる。

〔考察〕履行不能における損害賠償の範囲

上述の事例で、原始的不能を理由に契約が無効となる場合、買主は、「契約締結上の過失」法理にもとづいて、売主に対して損害賠償を請求することができる。ただし、この場合は契約が無効である以上、損害賠償の範囲は信頼利益(契約締結の準備費用)までにかぎられ、履行利益(転売利益など)までは認められない。一方、後発的不能の場合には、契約が有効であることを前提に、買主は売主の債務不履行責任にもとづく履行利益の賠償を請求することができる。家屋の焼失が契約締結の前か後かという偶然の事情によって、このように効果が大きく異なるのは不合理である。そのため、原始的不能の場合にも契約は有効であると考える見解も有力に主張されている。

3 全部不能と一部不能

法律行為の内容の全部が不能である場合(全部不能)は、法律行為の全部が無効であるが、一部だけが不能である場合(一部不能)はどうなるか。法律行為の効力はできるだけ維持すべきであるから、一部不能の場合にはその一部についてだけ無効となるのが原則である。ただし、一部無効が当事者の意思に反するようなときは、法律行為は全部無効とすべきであろう。

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