このページの最終更新日 2020年11月22日
ある物が「1個」であるかどうかは、取引観念によって定まる。
たとえば、靴は左右一組で1個の物である。
また、土地は、「一筆の土地」単位で登記されてそれが1個の物になる。
建物は1棟で1個であるのが原則だが、分譲マンションなどの専有部分は各々が1個の建物となる。
立木(土地に生立する樹木の集団)は、原則として土地の一部であって、独立して権利の客体とはならない。しかし、立木法による登記をしたり明認方法を施したりすることによって独立した取引の対象となる。
一つの所有権の客体は1個の独立した物であって、物の一部(たとえば、家屋の木材)だけに所有権が成立することは認められない*。これを物の独立性と呼ぶ。
* 民法が規定している例外として、231条2項、242条ただし書がある。
これは、物の権利関係が複雑になることを避けて取引を安全かつ円滑に行えるようにし、また、物の分離によって社会経済的損失が生じることを避けるために要求される。
土地に関しては、例外的に、一筆の土地の一部についての譲渡や時効所得が認められている。
一つの所有権の客体は単一の物でなければならず、複数の物の上には所有権は成立しない。これを物の単一性と呼ぶ。
もっとも、特別法によって物の集合体の上に物権が成立することが認められている。
* 立木法(立木ニ関スル法律)は樹木の集団(立木)の上に一つの物権が成立することを認め、各種財団抵当法は企業財産の集合(財団)の上に一つの抵当権が成立することを認める。
さらに判例によると、動産の集合体(たとえば、在庫商品すべて)であっても一つの担保権の客体となりうる(最判昭54.2.15、最判昭62.11.10)。
独立性と単一性の原則を合わせると、「一つの所有権の客体は1個の物でなければならない」と表現することができる。これを一物一権主義という。
一物一権主義には、もう一つの意味として、「1個の物の上には一つの所有権しか成立しない」という意味もある。これは、物権の排他性と同義である。
① 一つの所有権の客体は1個の物でなければならない。
② 1個の物の上には一つの所有権しか成立しない。
次の各文を読んで、その内容が正しければ○、間違っていれば✕と答えなさい。
(1) 1個の物は、その構成部分を分離したうえで処分することができない。
(2) 一筆の土地の一部だけを譲渡することはできない。
(3) 原則として、一つの所有権の客体は1個の物でなければならない。
ヒント
(1) 1個の物であっても、その構成部分を分離したうえで独立した物として処分することも可能である。たとえば、自動車の部品を取り外して独立の取引対象とするなど。
(2) 土地は、その一部だけを譲渡や時効取得の対象とすることができる(大連大13.10.7)。
(3) 一物一権主義。もっとも、特別法や判例によって物の集合体の上に一つの物権が成立する場合があることも認められている。
正解
(1) ✕
(2) ✕
(3) 〇