このページの最終更新日 2020年11月30日
果実とは、物から生じる収益をいう。収益を生じさせる物を元物(げんぶつ)という。
果実には、天然果実と法定果実の2種類がある。
(1) 天然果実
天然果実とは、「物の用法に従い収取する産出物」(88条1項)をいう。
たとえば、農作物、鉱物、計画的に伐採される材木がこれにあたる。
天然果実は、原則として元物から分離するときに独立の物となる。
(2) 法定果実
法定果実とは、「物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物」を言う(88条2項)。
たとえば、家賃・地代(不動産使用の対価)、レンタル料(動産使用の対価)、利子(元本使用の対価)がこれにあたる。
法定果実は、元物そのものの利用によって得られる利益(使用利益)とは異なる。
果実の帰属のしかたは、天然果実と法定果実とで異なる。
(1) 天然果実の帰属
「天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する」(89条1項)*。収取権者は、元物の所有者または地上権者・永小作権者などである。
* 未分離果実が独立の取引客体となる場合、本規定は適用されない。
たとえば、妊娠した馬を買い取った後に子馬が生まれた場合、子馬の所有権は出産時の親馬の所有者である買主に帰属する。
(2) 法定果実の帰属
「法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する」(89条2項)。
たとえば、賃貸中の建物を売買する場合、所有権移転前の賃料(法定果実)は売主に、移転後の賃料は買主に帰属する*。
* 法定果実の帰属は内部関係の規律にすぎず、債務者は新たな収取権者に支払えば足りる。
物は、民法が規定する分類以外にも、さまざまな観点から分類される。
(1) 可分物・不可分物
物の性質または価値を著しく損なわずに分割できるものを可分物といい、そうでないものを不可分物という。たとえば、金銭や土地は可分物であり、動物や自動車は不可分物である。
この区別は、共有物の分割(258条)や多数当事者の債権関係(427条・428条)など、1個の物に対して複数の者が権利を有する関係で意味を持つ。
(2) 代替物・不代替物
取引上一般に個性を問題とせず、種類・品質が同じ物で代えられる性質の物を代替物といい、取引上物に個性があり、他の物で代えることができない性質の物を不代替物という。たとえば、金銭や米は代替物であり、土地や美術品は不代替物である。
区別の実益は、消費貸借(587条)・消費寄託(666条)は、代替物を目的物とする点にある。
(3) 特定物・不特定物
具体的な取引の際に当事者が物の個性に着目したときのその物を特定物といい、そうでない物を不特定物という。たとえば、当事者が取引の際に「この車」と指定したときは特定物であるが、「車10台」としたときは不特定物である。
代替物・不代替物の区別と似ているが、代替物・不代替物は物の性質による客観的区別であるのに対し、特定物・不特定物は当事者の意思にもとづく主観的区別である点で異なる。
特定物の給付を目的とする債権と不特定物の給付を目的とする債権とでは扱いが異なるので、区別の実益がある(400条~403条・483条・484条)。
次の各文を読んで、その内容が正しければ○、間違っていれば✕と答えなさい。
(1) 物から分離して得られた物は、すべて天然果実である。
(2) 賃料を生じる期間の途中で賃貸物件の所有者が変更した場合、当該期間の賃料はすべて新所有者に帰属する。
(3) 特定物・不特定物は、具体的な取引に際して当事者が物の個性に着目したか否かによって区別される。
ヒント
(1) 天然果実とは、物の経済的用法に従って収取される産出物をいう。物の経済的用法によらずに分離した物(たとえば、盆栽の実)は、天然果実ではない。
(2) 法定果実の帰属は、収取権の存続期間に応じて日割り計算して決定する。所有権は果実収取権を含むから、新旧所有者は、賃料を生じる期間のうち賃貸物件の所有者であった日数分だけの賃料を各々取得する。
(3) 特定物・不特定物は、当事者の意思による主観的な区別である。これに対して、代替物・不代替物は、物の性質による客観的な区別である。
正解
(1) ✕
(2) ✕
(3) 〇