単独で有効な取引行為(法律行為)をすることができる資格のことを行為能力(こういのうりょく)という。
民法は、一定範囲の者を判断能力が不十分な者であると画一的に定めて、それらの者の行為能力を制限する。
行為能力を制限する目的は、次のとおりである。
① 判断力が不十分な者の保護
子供(未成年者)や精神的な障害のある者は取引上の判断能力が不十分であるため、それら弱者を保護するための法的な配慮が必要になる。
そこで、それらの者の取引が適切に行われるように保護者を付け、さらに、単独でした取引行為の効力を否定することによって消極的に保護する*。
*行為能力の制限は、形式的な基準によって画一的に定まるので、その証明が容易である。
未成年者が行った取引行為の効力を否定するには、単に行為当時に未成年者であったことを主張・証明すれば足りる。取引を行うに足りる判断能力があったかどうかを具体的に判断する必要はない。
② 取引の安全の確保
いったん成立した取引の効力が否定されると、取引の相手方は不測の損害を被る*。
そこで、行為能力の制限を画一的に定めておくことによって、取引の相手方に対して警戒を促し、また、保護者の同意を得るなどの予防措置を相手方がとれるようにする。
取引の当事者は、相手方が制限行為能力者であるかどうかを容易に調査することができる。制限行為能力者は年齢や家庭裁判所の審判といった形式的な基準によって定まるのであるから、取引の相手方に対して年齢を確認できる書類や「登記されていないことの証明書」の提示を要求すればよい。
*取引の相手方を不安定な状態に置くことを、「取引の安全を害する」と表現する。