婚姻の効果

夫婦親族法

婚姻して夫婦になると、身分上および財産上のさまざまな効果が生じる。身分上の効果には、同居・協力・扶助の義務や貞操義務などがあり、財産上の効果には、婚姻費用の分担義務、日常家事債務の連体責任などがある。

婚姻の一般的効果

婚姻による身分上の効果を婚姻の一般的効果とよぶ。

婚姻の一般的効果には、次のようなものがある。

  1. 姻族関係の発生……夫婦の一方と他方の血族との間に親族関係が発生する(725条参照)。
  2. 夫婦の同氏……夫婦は、どちらか一方の氏を称する(750条)。
  3. 同居・協力・扶助の義務……夫婦は同居し、互いに協力・扶助する義務を負う(752条)。
  4. 貞操義務……夫婦は、相互に貞操義務を負う。
  5. 夫婦間の契約の取消権……夫婦間の契約は、婚姻中は一方が取り消すことができる(754条)。
  6. 子の嫡出性の付与……婚姻中に出生した子は、嫡出子となる(772条参照)。
  7. 配偶者相続権……配偶者は、つねに他方の相続人となる(890条)。

同居・協力・扶助の義務

夫婦は、同居し、協力・扶助する義務を負う(752条)。婚姻の中心的な効果である。

同居義務は、住居を同じくし生活をともにする義務である。同居の場所は、夫婦の協議で定める。

夫婦の一方が正当な理由がなく同居に応じない場合、他方は同居の審判を請求することができる。しかし、同居義務の性質上、強制執行することができない(大決昭5.9.30)。

正当な理由のない同居義務違反は、悪意の遺棄として離婚原因となる(770条1項2号)。

貞操義務

夫婦は、たがいに貞操を守る義務を負う。明文の規定はないが、婚姻の本質上、当然の義務である。

この義務に違反して不貞行為をした場合は、離婚原因となる(770条1項1号)。

また、他方配偶者は、不貞行為をした配偶者とその相手方に対して慰謝料を請求することができる(最判昭54.3.30)。ただし、すでに夫婦関係が破綻していた場合には、第三者は責任を負わない(最判平8.3.26)。

夫婦間の契約の取消権

夫婦間の契約は、婚姻中はいつでも一方から取り消すことができる(754条本文)。

これは、①夫婦間の契約は威圧や溺愛などに影響されやすく自由意思にもとづきにくいこと、②夫婦間の契約の履行を訴訟による解決にゆだねると家庭の平和を害するという立法趣旨にもとづく。しかし、本条に対しては存在理由に乏しいという批判がなされている。

「婚姻中」とは形式的にも実質的にも婚姻が継続していることを意味し、婚姻が実質的に破綻している場合には(破綻前に結ばれたものであっても)契約を取り消すことができない(最判昭42.2.2)。

夫婦財産制

夫婦間の財産関係を規律する制度を夫婦財産制とよぶ。

民法は、夫婦が婚姻の届出前にその財産について契約(夫婦財産契約という)をすることを想定し(契約財産制)、そのような契約がなかった場合に補充的に760条~762条の「法定財産制」が適用されるという構成をとる(755条)。

しかし、夫婦財産契約が締結されることは非常にまれであり、ほぼすべての場合に法定財産制が適用される。

夫婦の財産の帰属

夫婦の一方が婚姻前から有する財産、および婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)となる(762条1項)。これを別産制とよぶ。

たとえば、夫が労働して得た収入やその貯金によって購入した住宅は、夫の特有財産となる。

夫婦のいずれに帰属するか不明な財産は、夫婦が共有するものと推定される(同条2項)。

婚姻費用の分担

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(760条)。

婚姻から生ずる費用(婚姻費用)とは、夫婦だけでなく、その子をふくめた生活に必要な一切の費用をいう。衣食住の費用や、子の養育費・教育費、医療費・娯楽費など。

具体的な分担方法や金額は、夫婦の協議によって決定され、協議が調わないときには家庭裁判所の調停審判によって決定される。

日常家事債務

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