法律行為

民法総則法律行為

法律行為とは

法律行為とは、一定の法律効果を発生させようという意思を表示することにより、その欲した内容どおりの効果が生じる行為をいう。

法律行為は、当事者がした意思表示の内容どおりの法律効果を発生させる法律要件である。他の法律要件との違いは、意思表示を不可欠の要素とする点にある。

ある物を「売りたい」という意思表示*と、それを「買いたい」という意思表示*が合致することによって売買契約(法律行為)⁑が成立し、それにもとづいて代金請求権と目的物の引渡請求権が発生する。

* 「売りたい」「買いたい」は、それぞれ「目的物を引き渡す代わりに代金を受け取りたい」「代金を支払う代わりに目的物を引き渡してほしい」という内容の意思表示である。
⁑ 法律行為に関する論述は、契約を想定していることがほとんどであり、「法律行為」を「契約」に置き換えて考えてよい。

法律行為とは
法律行為とは

法律行為自由の原則

個人はその自由な意思にもとづいて権利・義務の関係(法律関係)を形成することができるという思想を、私的自治の原則という。

これを法律行為という言葉を用いて言いあらためると、法律行為(契約)は当事者が自由に行うことができる、と表現することができる。これを法律行為自由の原則(契約自由の原則)という。

具体的には、法律行為を行うか否か、相手方を誰にするか、どのような権利・義務の内容にするか、どのような方式で行うかといったことは、当事者が自由に決定することができる事柄であって、外部からの干渉を受けないことを内容とする(521条・522条2項参照)。

法律行為の分類

法律行為は、さまざまな観点から分類される。

契約・単独行為・合同行為

法律行為は、意思表示の結合のしかたによって次のように分類される。

契約

契約とは、申込みと承諾という二つの意思表示が合致することにより成立する法律行為をいう(522条1項)。

民法は、13種類の契約類型を定めている(第3編第2章「契約」参照)。民法その他の法律に規定されていない内容の契約を締結することも契約当事者の自由である(521条2項)。

単独行為

単独行為とは、一つの意思表示によって成立する法律行為をいう。

単独行為には、意思表示の受領する相手方を必要とするものと必要としないものとがある。前者を相手方のある単独行為*、後者を相手方のない単独行為⁑という。

* 取消し、追認、時効の援用、時効の利益の放棄、選択債権の選択、相殺、債務の免除、解除、買戻し、など。
⁑ 所有権の放棄、相続の放棄、遺言など。

合同行為

合同行為とは、複数の当事者が共通の目的に向けて意思表示をすることにより成立する法律行為をいう。意思表示の向けられた方向が同じである点で契約とは異なる。

合同行為の例として、社団法人設立行為や総会決議が挙げられる。

契約・単独行為・合同行為
契約・単独行為・合同行為

物権行為・債権行為

物権の変動を目的(内容)とする法律行為を物権行為、債権関係の発生を目的とする法律行為を債権行為という。前者の例として抵当権設定契約があり、後者の例として売買契約や賃貸借契約がある。

物権行為は、債権譲渡のような物権以外の権利の変動を目的とする行為とあわせて処分行為と呼ばれることがある。

要式行為・不要式行為

法律行為の要件として一定の方式(書面の作成や届出など)が必要とされるか否かによる分類である。必要とするものを要式行為、不要とするものを不要式行為という。

法律行為の方式をどのようにするかは当事者が自由に決定できるのが原則である(方式の自由)。しかし、さまざまな理由から一定の方式が要求される行為もある*。

*(例)保証契約、定款の作成、婚姻、養子縁組、認知、遺言、任意後見契約、手形の振出し、定期借地借家契約

財産行為・身分行為

売買契約や抵当権設定契約などのように財産法上の効果が発生する行為を財産行為、婚姻や養子縁組などのように身分法上の効果が発生する行為を身分行為という。

身分行為に対しては、民法総則の法律行為に関する規定が原則として適用されない。

準法律行為

法律行為と似ているが区別すべきものとして準法律行為がある。

準法律行為は、何らかの意思的要素をともなう行為であるが、法律行為のような意思内容どおりの効果ではなく、法律によって定められた効果が発生する行為である。

準法律行為には、意思の通知(例、催告、受領拒否)と観念の通知(例、債務承認、債権譲渡の通知)とがある。

たとえば、売買契約の当事者の一方が相手方に対して債務の履行を催告すると契約解除権が発生する(541条)。催告は「履行の催促」という意思の表現からなる法律要件であるが、その法律効果は「解除権の発生」という法律があらかじめ定めた内容のものになる。

また、債務の承認は、意思的要素をともなう行為であるが、時効の更新という法律が定めた効果が発生するので、準法律行為である。

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