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心裡留保

このページの最終更新日 2021年1月26日

1 心裡留保の意義

心裡留保とは

表意者(意思表示をする者)が真意でないこと(表示行為に対応する効果意思のないこと)を知りながら意思表示を行うことを心裡留保(しんりりゅうほ)という(93条)。➡意思表示とは

たとえば、内心では贈与するつもりがないのに、「これを君にやろう」と申し出るような場合である。

同じ虚偽の(真意でない)意思表示であっても、心裡留保の場合は表意者が相手方と通謀せずに単独で行うのに対して、虚偽表示(94条)の場合は相手方との通謀を要件とするという違いがある*。➡虚偽表示

【図】心裡留保と虚偽表示

心裡留保(93条)
虚偽表示(94条)

*心裡留保(93条)と虚偽表示(94条)は、それぞれ単独虚偽表示・通謀虚偽表示ともいう。

2 心裡留保による意思表示の効力

民法93条の規定

心裡留保による意思表示は、原則として有効である(93条1項本文)。

表意者は真意でない意思表示を行ったことについて自覚があるので保護する必要がなく、むしろ表示行為を信頼した相手方を保護するべきだからである。

そうであるとすれば、相手方が心裡留保であることを知っていたか(悪意)または知ることができた(有過失)場合にまで、表意者を犠牲にして相手方を保護する必要はない。

そこで、相手方が心裡留保について悪意または有過失であったときは、意思表示は例外的に無効となる(同項ただし書)*。

*相手方が悪意または有過失であることについては、意思表示の無効を主張する表意者側がその立証責任を負う。

【図】心裡留保による意思表示の効力

心裡留保の原則(93条1項本文)
心裡留保の例外(93条1項ただし書)

第三者との関係

心裡留保による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない(93条2項)。

真意でない意思表示をした表意者の帰責性(落ち度)を重くみて、意思表示を信頼して取引に入った第三者を保護する趣旨の規定である。

たとえば、ある土地がAからB、BからCへと順に売却された場合、Aの意思表示が心裡留保により無効であったとしても、Cが心裡留保であることを知らない(善意である)ときは、Aは第三者であるCに対して意思表示の無効を主張することができない。

理解度チェック

正誤問題

次の各文を読んで、その内容が正しいときは〇、間違っているときは✕と答えなさい。

(1) 心裡留保による意思表示と虚偽表示との違いは、虚偽表示の場合は相手方の意思表示も真意でないという点にある。

(2) 心裡留保による意思表示の相手方において、その意思表示が表意者の真意でないことを知らないことにつき過失があった場合、その意思表示は無効となる。

(3) 売買契約における売主の意思表示が心裡留保によるものであった場合、表意者である売主は、第三者に対しても意思表示の無効を主張することができる。

【解説】

(1) 心裡留保と虚偽表示との違いは、相手方と通じて意思表示したか否かという点にある。なお、単独行為であっても虚偽表示となる場合がある(最判昭31.12.28)。

(2) 93条1項ただし書。

(3) 心裡留保による意思表示の無効は、その意思表示を信頼して取引に入った第三者に対抗することができない(93条2項)。

解答

(1) ✕

(2) 〇

(3) ✕

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