養子制度
養子制度は、血縁がない者の間での法律上の親子関係の形成を認める制度である。
養子制度には、普通養子制度と特別養子制度とがある。
普通養子制度は、従来からある養子制度である。普通養子縁組は当事者の合意と届出によって成立し、その解消(離縁)も当事者が協議によって自由にすることができる。婿養子のような成年養子も認められる(実際にも成年養子のほうが未成年養子よりも多い)。
普通養子制度には子のための養子制度としては問題があるために、未成熟の子に親を与えるための制度として新たに創設されたのが特別養子制度である。
特別養子縁組は、家庭裁判者の審判によって成立する。離縁は、原則として認められない。普通養子とは異なり、実親やその親族との関係は終了し、戸籍の記載も実子に近くなる。
普通養子縁組は、婚姻と共通する部分が多く、婚姻に関する規定が多く準用される。
縁組の要件
普通養子縁組は、養親となる者と養子となる者との間の契約であり、戸籍の届出によって成立する(要式行為)。
縁組の実質的要件は当事者間に縁組意思の合致があることと、縁組障害がないことであり、縁組の形式的要件は縁組の届出である。
縁組意思
縁組意思とは、社会通念上、親子と認められる関係を成立させようとする意思をいう(最判昭23.12.23)。婚姻意思と同じく、単に縁組の届出をする意思だけでは足りない。
縁組障害
縁組を有効にするためには、次の要件を満たさなければならない。
- 養親となる者が20歳に達していること(792条)
- 養子となる者が養親となる者の尊属または年長者でないこと(793条)
- 後見人が被後見人を養子にするには家庭裁判所の許可を得ること(794条)
- 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにすること(795条)
- 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得ること(796条)
- 養子となる者が15歳未満であるときは、その法定代理人が代わって縁組の承諾をすること(797条1項)=代諾縁組
- (自己または配偶者の直系卑属以外の)未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得ること(798条)
以上の要件さえ満たしていれば、養子縁組は有効である。成年者を養子にすることも、兄が弟を養子にすることも可能である。成年被後見人が成年後見人の同意を得ることも要しない(799条→738条)。
養子となる者が15歳未満であるときに、その法定代理人(親権者・未成年後見人・児童福祉施設長)が代わって縁組の承諾をすることを代諾縁組という(797条1項)。一種の代理である。
子の法定代理人でない者(たとえば戸籍上の父母)による代諾は一種の無権代理行為となるが、養子が15歳に達した後に追認することによって初めから有効となる(最判昭27.10.3)。
縁組の届出
養子縁組は、戸籍の届出によって成立する(799条→739条)。民法792条から798条までに定められた要件(上述)を満たさない縁組の届出は受理されない(800条)。
子を望む夫婦が、出生後間もない他人の子をもらい受けて、自分たちの嫡出子として出生届をすることがある(「藁の上からの養子」という)。
このような虚偽の出生届は当然に無効であるが、これを養子縁組届として有効とできないかが問題とされる(無効行為の転換)。判例は、これを認めない(最判昭25.12.28)。
縁組の無効・取消し
当事者に縁組をする意思がない場合、縁組は無効になる(802条1号)、人違い、本人の知らない間に届出がなされたとき、他の目的のための方便として縁組届がなされたとき(仮装縁組)などがこれに当たる。
法定の要件を満たさない縁組や、詐欺・強迫による縁組は、その取消しを家庭裁判所に請求することができる(803条~808条)。取消しの効果は婚姻の取消しに準じ、復氏などは離縁に準じる(808条)。
縁組の効果
養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得する(809条)。養子は養親の氏を称し(810条本文)、養子が未成年である場合は養親の親権に服する(818条2項)。
養子と養親との間に嫡出親子関係が発生するだけでなく、養親の血族との間にも親族関係(法定血族関係)を生ずる(727条)。養子とその実親および実方の親族との関係も存続するので、養子は実方と養方の双方の親族関係(相続・扶養関係)を持つことになる。
なお、縁組時に養子にすでに子がいる場合、その子と養親との間には親族関係が生じない。
離縁
養子縁組は、離縁によって解消することができる。
離縁には、離婚と同様に、①協議離縁、②裁判離縁、③調停離縁(家事事件手続法)、④審判離縁(同法)の種類がある。さらに、死後離縁の制度が置かれている。
協議離縁
縁組の当事者は、協議によって離縁することができる(811条1項)。協議離縁は、婚姻に準じる方式で届出をすることで成立する(812条→739条)。
養子が15歳未満の場合は、離縁後にその法定代理人となるべき者(通常は実父母)との協議による(811条2項)。養子が15歳以上の場合は、本人との協議による(未成年者であっても、家庭裁判所の許可は不要)。
養親が夫婦である場合に未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない(811条の2本文)。
当事者が離縁意思を欠く場合は無効であり(規定なし)、詐欺・強迫による離縁は取り消すことができる(812条→747条)。
裁判離縁
縁組当事者は、次の事由(離縁原因)がある場合、離縁の訴えを提起することができる(814条1項)。
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき(1号)
- 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき(2号)
- その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき(3号)
判例は、離婚と同様に、有責者(破綻の原因を作った者)からの離縁請求を認めない(最判昭39.8.4)。また、悪意の遺棄と生死不明の場合、裁判所は裁量で離縁請求を棄却することができる(814条2項→770条2項)。
死後離縁
婚姻の場合と異なり、縁組当事者の一方が死亡しても養親子関係は当然には終了しない。
縁組当事者の一方が死亡した場合には、生存当事者は家庭裁判所の許可を得て離縁をすることができる(死後離縁、811条6項)。
死後離縁は、養子と養方の親族との間の法定血族関係の終了を目的とする意思表示であり、届出によって成立する(生存配偶者の姻族関係終了の意思表示(728条2項)に相当する)。
離縁の効果
離縁によって養親子間の嫡出親子関係は消滅する。それを基点とするその他の親族関係(血族・姻族)もすべて消滅する(729条)。もっとも、近親婚の禁止は存続する(736条)。
養子は縁組前の氏に復し(養親夫婦の一方のみと離縁した場合を除く、816条1項)、原則として縁組前の戸籍に入る(当然の復氏・復籍)。
養親子関係が7年以上経過した後に離縁した場合には、離縁の日から3か月以内に届け出ることによって、養子時の氏を称することができる(同条2項)。
養子が養方の祭祀財産を承継していた場合は、離婚に準じる(817条→769条)。
特別養子制度
特別養子制度は、家庭に恵まれない子の養育を目的とする養子制度である。子の福祉の観点から、普通養子と比べて厳格な要件が定められている。
特別養子縁組の要件
養親の要件(夫婦・年齢)
養親は、配偶者のある者が夫婦共同で養親とならなければならない(817条の3)。子の養育のためには、夫婦ともに親となることが望ましいからである。
養親は、夫婦の少なくとも一方が25歳以上であることを要する。他方は、20歳に達していればよい(817条の4)。
養子の要件(年齢・同意)
養子は、縁組成立の審判の申立て時に15歳未満(例外あり)、審判時に18歳未満であることを要する(817条の5第1項)。
養子となる者が審判時に15歳に達している場合、その者の同意がなければならない(同条3項)。
父母の同意
原則として、養子となる子の父母(養父母を含む)の同意が必要となる(817条の6)。
要保護性
「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認め」られること(817条の7)。孤児や棄児、実親に養育能力がない婚外子、虐待を受けている子などがこれに当たる。しかし、普通養子からの転換や連れ子などには、原則として要保護性はない。
特別養子縁組の成立手続き
特別養子縁組は、養親となる者の申立てにもとづき、家庭裁判所の審判によって成立する(817条の2)。この手続きは、二段階に分けて行われる(家事事件手続法)。
まず第一段階として、実親による養育状況および実親の同意の有無等が審理され、特別養子適格の確認の審判がなされる。第二段階として、6か月以上の試験養育期間(817条の8)を経た後に、特別養子縁組成立の審判がなされる。
特別養子縁組の効果
普通養子と同様に、養子と養親およびその血族との間に親族関係が発生する(809条・727条)。養子は、養親の氏を称する(810条)。
普通養子と異なり、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は終了する(817条の9)。ただし、近親婚の制限は残る(734条・735条)。
特別養子の戸籍は、実子に近づける工夫がされている。
特別養子縁組の離縁
特別養子縁組は、離縁することができないのが原則である。
例外的に、①養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があり、②実父母が相当の監護をすることができる場合には、一定の者の申立てによって家庭裁判所は離縁の審判をすることができる(817条の10)。
離縁によって実父母およびその血族との親族関係が復活する(817条の11)。
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